「そうですねー、私のこだわりと言えば、お客様の話やご要望をなるべく聞いてさしあげ、まじめに商うことかなー。かえってうちのお得意様のほうから、こだわりのご注文をいただくことが結構多いからね!」
そう話すのが、団塊世代でもうすぐ還暦を迎える水流商店3代目店主・水流直人さん。
水流商店は昔から主に、市立病院、国立病院、医師会病院など病院関係や学校・保育園関係の納め物を商っており、夏場の入札関連の業務は、地球温暖化に起因する集中豪雨の頻発などで、夏場の野菜が異常に高騰、事前に単価を設定して落札している事情から、かなりの苦戦を強いられた模様。
創業が昭和元年という水流商店は、初代直次郎さん、2代目文雄さん、3代目が現店主直人さんの3代続く老舗で、初代は八百屋を始める前は納屋近隣の魚屋さんだったようだ。
店主直人さんの経歴も異色で、日大の工学部出身とのことで、トヨタ系列の愛知県安城市のストーブ製造会社に、金属加工やプレスの技術者として4年間くらい勤め、昭和53年に父文雄さんが他界した後、実家の青果業を継ぐため、帰鹿。
28歳のころ家業を継ぎ、還暦を迎える直人さんは、小売と納め物の両業務を商ってきたが、平成10年に4階建てのマンションを建設した際に、納め物専業に特化。
馴染みのお客様への小売対応も僅かに商いながら、主に納め物専業を商い始めて以来12年間、朝3時半に起床し、5時には市場で仕入れ活動に入る日々が続いている。
「日曜日など一応休暇を取りますが、溜まった伝票の整理などに追われことが多く、2時間ほどの昼寝で睡眠不足を補いながら、寝すぎてかえって体調を崩さないように気をつけています。他には、朝風呂などで健康維持に努めてますね」と、笑う直人さん。
インドア派を自認する直人さんの趣味は、ハム(無線)・オートバイ・ステレオなど工学部出身者らしい趣味から、陶芸・映画・音楽鑑賞までと幅広く、かつて鹿児島にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が訪れたとき、奥様と同伴で生演奏を楽しんだことなど、趣味の思い出も多岐に渡る。
店主直人さんのこだわりはと問えば、「そうですね、天文館の果物屋さんに負けないくらいの珍しい果物をいつも揃えているように努めていることや、鹿児島の一級品の青果物を出荷する本物の生産者を、すべて味を確かめながらしっかり把握するように努めることですかね」と、笑う。
事実、青果市場内での試食も当然だが、仕入れてきた青果物すべての箱を開け、すべての味見を済ませてから、クライアント先への納め物として、自信を持ってお届けしているとのこと。
「現物を食べてみなければ、お客様に何もアッピールも出来ませんよ! 納め物は特に、お客様に変なものをお届けしたら、それですべて終わりの世界ですから、手抜きはできませんし、青果物は味が命!ですからね」と語る直人さん。
また、直人さん自身が若い頃学んだトヨタ流のQC活動や生産管理のカンバン方式など、青果業界や八百屋さんなどの小売店舗にもしっかり応用できるとし、ブレーンストーミングで生まれた発想データをグループごとにまとめて図式化し、問題点を明確化していくKJ法など、組合の中でもいろいろと皆で勉強して活用してみたいと思っているようだ。
店主直人さんが、納め物の納品・単価管理などでパソコンを導入したのも先駆け的に早い時期で、今後の業務の課題としては、寝る間もないくらいの納め物業務の中で、いかにしたら、ネット販売など時代の流れに合わせた新業務を開拓出来るのか、いろいろ模索している模様。
「まだ、マンションのローンも終わっていないし、青果業が好きなので生涯現役でがんばります!」ときっぱりと話す店主直人さんに益々「味の研鑽」による「お店の元気発信!」をお願いしたいし、学生たちが世の中を変えようとして起こした激動の70年安保を直に体験した団塊世代として、今後の益々のご活躍を念じたいものです!